母親というもの
ロシアの児童文学作家、ユーリィ・ヤーコブレフの短編の「大地の心」からの文。
戦時中、物がなかった時代を過ごし、母の亡きあとに母を回想するシーン。
ぼくは献身的な行ないをした婦人をたくさん知っている。
職場から傷ついた兵隊たちを運んだ婦人。男性のかわりに働いた婦人。自分の血を子どもたちに捧げた婦人。自分の夫を追ってシベリアまで歩いていった婦人・・・
その婦人たちとぼくの母に、似ているところがあるとは今まで思ったこともなかった。
ひかえめで、内気で、平凡で、子どもたちに食べさせたり、着させたり、大切に世話をすることばかりにあくせくしていた母・・・
ぼくは今、母の一生をふりかえってみて、はっきりとわかった。
母は、りっぱな行ないをした婦人たちと同じことを全部やってのけたのだった。
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