人生には中立はない
詩人というのは詩との闘いをくぐりぬけ、なお生きのびている者です。
40歳になる頃には、ほとんどの詩人が詩を書くのをやめるか、自殺したりするのは、偶然ではありません。
わたしはいわゆる政治的にコミットしている社会参加の詩と、そうでない詩をわけることはしません。どんな詩も政治的です。
たとえ象牙の塔に逃げこんだとしても、それもひとつの政治的態度の表明です。
それは「わたしは関係がない」ということで、それも政治的です。
人生には中立などというものはありません。
イスラエルでは政治に無関心でいるという贅沢はできません。国民全員が政治の一部だからです。
イスラエルでは恋愛詩ですら政治的なのです。それは毎日毎日が生か死かの問題の直面だからです。
(岩波書店『へるめす』44号、1993年「イェフダ・アミハイ 詩の朗読の夕べ」より抜粋)
~2016年2月15日 毎日新聞夕刊~
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