園芸家に読んでほしい本

「みどりのゆび」 岩波少年文庫から出ているモーリス・ドリュオン作の本です。

フランス人ですが、第二次世界大戦に出征した経験があるそうです。

この本は、端的に言うと反戦の本なのですが、なんというか単純な勧善懲悪なお話ではなく、主張としてははっきりしたものがあるのですが、すごくピュアな気持ちで語られる場面が多いため、肩ひじ張らずに読めるところがいい所だと思います。

あらすじとしては、チトという男の子が「みどりのゆび」を持っており、チトの手にかかるとどんな植物もすぐ花を咲かせることが出来るのです。そして、チトは街中を花でいっぱいにし、ついには大砲の中にも植物のつるがからまるようになり、武器を使えなくなった人達は、戦争をあきらめるのです。

例えば、チトの考えることはこういったことです。刑務所の様子を見たチトは

・・・《あのかわいそうな囚人たちに、なぜあんなにみっともない服装をさせるのだろう。あんなにしておいたら、囚人たちはりっぱな人にならないだろうな。ぼくだったら、あそこにとじこめられたら、たとえわるいことはなにもしなくても、しまいにはきっといじわるな人間になってしまう。囚人たちが不幸でなくなるためには、どうしたらいいんだろう?》

ふいにある考えが頭をかすめました。《そうだ。あのひとたちに、花をさかせてやったら?》・・・

また別のとき、動物園に行ったチトはこう考えます。お国を離れてオリの中に入れられている動物たちを見て不憫に思ったチトは、《動物たちが毛の中に花の種をはさんでやってきたら、それが育って、動物たちも幸せに暮らせるんじゃないかしら》と。チトのみどりのゆびの魔法にかかり、動物たちは自分たちの国にある植物のそばで、幸せに生活が出来るようになります。


チトはこう言います。「花って、さいなんをふせぐことができるんだよ」

このお話を聞いて、そんな絵空事!と思いますか。私は、自分の経験則から言って、あながちうそではないというか、むしろ本気でそう信じています。

今は、忙しくて庭仕事が全く出来ていない状況なのですが、4、5年前は毎日庭のことばかり考えている生活をしていました。私が今住んでいるところは、玄関の前が人が通る道なのですが、その時期にはそこを通る人に本当によく声をかけられました。たぶん、100人くらいの人と話をしたり挨拶をしたりしたと思います。

毎日朝・夕には庭の掃き掃除や手入れをしていましたが、そういう時に通りがかる人が私に話しかけてくるのです。

みんな、美しいものを見ると、「美しいですね」と伝えたくなるのだと思います。そして、私の思い込みかもしれませんが、こんな美しい花の世話をしている人(私のこと)は、いい人に違いない、と思って話しかけてくれているのだと思ったのです。

本当に素敵な日々でした。

私は、あの日々をまた取り戻さなければと思っています。

園芸が趣味だという方、その園芸は大げさでなく世界平和につながります。

「みどりのゆび」は、フランス人の書いた作品ですが、フランスの三つの標語「自由・平等・友愛」にふさわしく、この作品にもその精神が反映されていますので、植物を育てる人には特に読んでほしい作品です。





みどりのゆび  /  ドリュオン作・安東  次男  訳(岩波少年文庫)




4、5年前の景色です。



おとなりさん所有のつぼをお借りして、メダカを泳がせていました。イギリス風のつぼに見えますが、おしょうゆとかの液体を入れていたつぼだったよう。



和洋折衷が好きです。






今年2016年、放置プレイにも耐えて、誇り高く開花をして下さったオールド・ローズ、マダム・アルディ様