黒柳徹子さん②

~栄養失調の子どもに会ったんですね。6歳の男の子で、ずるずると地面を這っているんです。この子はどうしたんですか?と聞いたら、乳児の時にお母さんのおっぱいが出なかったから、脳に充分な栄養がいかなかったのだというのです。

粉ミルクなんてないし、あっても買えないから、食糧不足で母乳が出なければ、赤ちゃんは口にするものが何ひとつ、ない。

身体の成長不足はあとからでも回復するけれど、脳は途中で成長が阻害されてしまうと、それから先、そんなに食べさせても回復しないんだそうです。

その6歳の男の子は、赤ちゃんの時に脳の成長が止まってしまったから、考えることや話すことはもちろん、歩いたり立ったりもできない。この先、運よく生き延びたとしても、ただもう這っているしかないと知って、本当にショックでした。

私は自分を恥じました。日本でパンダだなんだと騒ぎ、いかに色んなことに関心を持たずに生きてきたか。

もしユニセフの大使にならなかったら、日本でぼんやりしたまま、のんきに暮らして死んでいっただろうと思ってね、とにかく、こんなにも子どもたちが困った状況にあることを「知らなかった」ことが、すごく恥ずかしかった。~

あの時のわたし 第四回(前編) 「象を知らない」 暮らしの手帖80号(2016年)


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