アメリカン・マヨネーズ・ストーリーズ
バレンタインに、私の大切な人に贈った本を紹介します。
秋山晶「アメリカン・マヨネーズ・ストーリーズ」です。
秋山さんはコピーライターです。この本は、キューピーのマヨネーズの広告に載せていた文章と写真を集めたものです。
私の大切な人の大切にしている思い出の場所が、炭酸の飲み物を製造していた工場で、その建物がアメリカンな建物だったのです。
創業者はイギリス人だったらしいのですが、やはり炭酸飲料といえばアメリカですよね。
近辺を走る車窓の中からは、その工場が見えたという・・・
それを知って、真っ先に思いついたのがこの本なのです。
マヨネーズの広告だったので、文章の中には必ず「マヨ」または「マヨネーズ」という言葉が入っています。
この広告の制作の過程まではよくわからないのですが、文章に合わせて写真を撮りに行ったというのはちょっと難しいと思うんです。
中には「赤い屋根が・・・」とかいう言葉があって、実際の写真にも赤い屋根の建物が写っていたりするのですが、文章をもとにその景色のある場所を探しに行くというのは難しいですよね。
なので、先に写真があって、その写真の景色から秋山さんが連想した物語を当てはめたというところでしょうか。
そう思うとですね、先ほどの炭酸工場のことも、秋山さんだったらちょっと材料を与えてあげたら、素敵な物語を作ってくれそうな気がするんです。
私の大好きな作家、トルーマン・カポーティの話も出てくるし、大好きな本なのです。
私の大切な人も気に入ってくれたらいいな。
目を閉じ、ふたたび開くと、もうそこにないアメリカ。
秋山晶-アメリカン・マヨネーズ・ストーリーズ (ビジネス社 / 絶版)
「見て、見て。わたしが生まれた家よ。」
マルタを過ぎた頃から、ジェーンは黙ってしまった。列車はモンタナの北部を西に向かっている。風景はさえぎるもののない平原だ。目をこらすと地平線がカーブを描いているのがよくわかる。草原は夜明け前のブルーから午前の明るいゴールドに色を変え、いま、陽は真上だ。
黒人の車掌がダイニングカーの案内に来る。あとでサンドイッチでも食べましょう。
ターキーとマヨがビュッフェにあるわ。30分でヘーブルです。と言って車掌が去ると、ジェーンは遠くを見つめ目を細める。頬が上気する。
ワーオ、ジョニー。わたしが育った牧場よ。赤い屋根、見えるでしょ。わたしたちの家だったわ。
やがて、3つの建物が視界から消えると、彼女はポツリと言った。あの屋根はね、以前はグリーンだったのよ。
そして、微笑して立ちあがった。さあ、ビュッフェに行きましょ。(Harve / Montana)
96p-97p
「黄色いレインコートを着たジェーンが立っていた」
36p-37p
「初めて見た象は、列車に乗っていた。」
116p-117p
「スクールバスの窓から、ペギーが行く列車を見た。」
132p-133p
「20秒のあいだ、兄貴の墓が見えていた。」
100p-101p
「10年後ここで会おう、と言った。」
24p-25p
ここが「ウィルキンソン・タンサン工場」
(今はもうない)
写真引用: ウィルキンソンタンサン鉱泉宝塚工場調査報告書 西宮市教育委員会足立裕司編(1996)
本の帯にある言葉と同じ。
「目を閉じ、ふたたび開くと、もうそこにないアメリカ。」
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