ぼくは盆栽

月刊 たくさんのふしぎ / 沼田元氣 より(絶版)

(沼田元氣さんが、盆栽人間の格好で、芸術号と書かれたリアカーと共に東京の日本橋から京都の三条大橋まで歩いた時の本です)


みなさんは、冒険旅行というとまず一番に何を想像しますか?

ヨットで世界一周をしたり、世界一高い山に登ったり、はたまた砂漠を車やオートバイで走りぬけたりすることでしょうか。たしかにそれも目に見えてすばらしい冒険だと思います。

しかし、そういうことをする人たちが冒険家であるのは、まず、人がやらないことをやろうと考えるという冒険をしているからなのです。もちろん、それを本当にすることは大切なことです。でもその前に、それを考えだす、計画をするという、目に見えない心の中の冒険があります。

それは、「こんなことをしたら人に変に思われるんじゃないだろうか」とか「もし失敗したらはずかしいな」と思うことをのりこえて、まず自分のやりたいことに正直者になるという冒険です。

そういう心ン中の冒険は、いつでも、どこでもできます。それは、見たり聞いたりしたものを正直に自分の心の中できれいだなと感じたり、おもしろがったりすることです。

この本は、盆栽小僧の松ちゃんが東海道を旅した時のオハナシです。

その時、盆栽小僧であるぼくは、この人間盆栽のすがたをかっこいいと、まじめに思っていました。

そしてそのかっこよさというのは、時の流れやはやりとは、関係のないことだと考えているのです。

そうしてこのかっこうで歩いた時、一番楽しんでくれた、よろこんでくれたのは、みなさんと同じような子どもたちでした。かっこいいといってはげまし、おうえんしてくれたのでした。

ぼくは、その時どんなにうれしかったか思い出しては、涙が出そうになります。そして、今みなさんのすきなものが、大人になってからも変わらずにそばにいてくれたら、どんなにうれしいかしれません。

ぼくは、生きてゆくということは、どれだけ自分のすきなことを信じられるか、どれだけすきなこととなかよくできるかということだと思います。


月刊たくさんのふしぎ /   ぼくは盆栽 (沼田元氣・福音館書店)

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